英米系シンクタンク記事集:北朝鮮の軍事的挑発と核拡散への警告相次ぐ
2011-12-20



 金総書記の訃報は、米朝が22日から北京で今年3度目の核協議を開くことで最終調整に入り、米日韓などが求めるウラン濃縮停止での合意に向けて期待が高まっていた時に飛び込んできた。7月と10月の2度の協議で北朝鮮は「核の平和利用」を主張したが、11月末〜12月初めに訪朝した米専門家グループには濃縮中断に応じる用意を示唆していた。

 北朝鮮は服喪期間に入るため米朝協議の先送りは必至。今後は「葬儀委員会名簿トップの正恩氏が後継者の正統性を活用して核交渉の枠組みを使っていく」(尹教授)との見方もあるが、指導力を確立できない場合、軍部の勢いが増してウラン濃縮が続行される可能性もある。オバマ政権は正恩体制の対応を注視せざるを得ない。

 オバマ大統領は金総書記の死去を受け、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と電話協議し、韓国の安全保障に責任を持つ考えを伝えた。また、19日昼(日本時間20日未明)に米国務省で予定しているクリントン長官と玄葉光一郎外相の日米外相会談で、急きょ今後の対応を協議することになった。

 日本政府は6カ国協議再開に向け、ウラン濃縮活動の停止などを米韓とともに求めてきた。ただ、南北、米朝の協議で日本が関与できる余地は限られている。外務省幹部は「6カ国協議の話は日米外相会談の後だ」と米国とのすりあわせが必要との認識を示した。藤村修官房長官も記者会見で「米朝協議が次回いつ開かれるかを注目している」と述べ、関係国の出方待ちの姿勢を示唆した。

 ◇6カ国協議、中国が早期再開探る 朝鮮半島緊張回避に全力

 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議議長国の中国は08年12月から中断している協議の早期再開を関係国に働きかけてきた。米朝協議進展の兆しが見え出した直後の金総書記の死去に衝撃を受けていることは間違いない。6カ国協議再開の展望は不透明感が強まったが、中国は後継体制支援を続けつつ再開の糸口を探るとの見方が強い。

 「(北)朝鮮の核問題に対する中国側の立場は明確だ」。中国外務省の劉為民報道局参事官は19日の定例記者会見で、朝鮮半島の安定のため、6カ国協議の早期再開を追求する立場を強調した。06、09年の核実験で朝鮮半島情勢の緊張を招いた金総書記の強硬姿勢に関する質問にはコメントを避けた。

 中朝関係は北朝鮮による核実験やウラン濃縮活動の着手で冷え込んだ。対話による核問題の解決を主張する中国は、関係国の危機感をあおる金総書記の手法に振り回された形だった。それだけに今後の北朝鮮体制が不安定化し、再び朝鮮半島情勢が緊張することを回避するために全力を挙げるとみられる。

 金総書記は昨年5月から今年8月までの間に4回、中国を訪問し、うち3回は胡錦濤国家主席と会談して両国関係の強化と6カ国協議の早期再開を確認。10月には次期首相の有力候補とされる李克強副首相が訪朝し金総書記との会談で協議再開に向けた北朝鮮の対話の動きを支持する考えを表明、事態の進展に期待感を高めていた。

 遼寧社会科学院辺疆研究所の呂超所長は本紙の取材に「6カ国協議再開は金総書記が決めた方針であり、新たな指導者も変更することはあり得ない。(北)朝鮮問題は中国の周辺外交の中でも最重要課題の一つであり、まずは権力継承が安定的に進むようにできる限りの経済支援をしていくだろう」と語った。

 ロシアは経済面で北朝鮮との結びつきを強め、朝鮮半島情勢に積極的に関与する姿勢を示し始めている。


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