<尖閣諸島沖衝突事件> 「そもそも放水で対抗すべきだった」 生かされなかった米海軍音響測定艦「インペッカブル」の教訓
2010-09-26


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しかし、中国外務省の馬朝旭報道局長は10日の定例会見で、「米国船が中国政府の許可も受けずに、中国の経済水域で活動したことは国際法と中国の法律に違反している。米海洋調査船を脅すような行動を取ったというのは事実と全く異なる」と否定した。


【湯浅博の世界読解】「中国の海」で米中熾烈
2009/03/18 産経新聞 東京朝刊

 中国海軍はこのところ、南シナ海を「中国の海」にすべく米海軍に真っ向から挑戦している。とりわけ、その重要な拠点となる海南島の周辺で警戒が厳しい。島に地下要塞(ようさい)をつくって原子力潜水艦を配備し、海中から出入りさせる。

 軍事専門家は今回の南シナ海を舞台にした米中小競り合いで、中国艦船の統合運用ぶりに注目している。

 米音響測定船インペッカブルが海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の情報船を含む5隻に「危険な操船行為を伴う妨害」(米国防総省)を受けた。

 興味深いのは中国艦の巧みな連携で、最初に海軍のフリゲート艦と航空機Y−12が出てきた。次いで国家海洋局の情報収集船、海洋漁業局のパトロール船、それに海上民兵のものと思われるトロール船2隻が加わる。

 これまでバラバラだった各機関がピタリと呼吸を合わせてきた。

 中国艦は危険な距離を超えて8メートルまで接近し、木片をインペッカブルの進行方向にばらまいて妨害したという。調査船に木片を見舞うとは、いかにも海上民兵らしいやり方である。

 この「海上民兵」というのがクセ者で、外見は漁船だから最初は識別が難しい。隠した魚雷を発射してくることもあるし、いつの間にか漁船団となって敵を囲んでしまうこともある。

 これを攻撃すれば「敵は無実の漁船を攻撃した」との宣伝に使われる。いわば海の便衣隊である。南京事件のさい、軍服を脱ぎ捨て後方撹乱(かくらん)した便衣兵と同じ発想だ。調査船は機銃すら持たないが、放水で対抗したのは妥当だった。

 防衛大学校の太田文雄教授によると、海上民兵は地方ごとに漁民で構成され、海軍が実施する演習にも定期的に参加して海上作戦で一定の役割を担う。

 中国はこの手で、ベトナムが領有していた西沙諸島の一部を1974年に海上民兵に占領させ、フィリピンでも90年代にミスチーフ環礁を奪わせた。しかも、今回は軍、海洋局、漁業局などの統合がとれていた。

 もちろん米国は中国に抗議するとともに、インペッカブルを護衛するためにイージス型駆逐艦を現場海域に派遣した。

 中国はこれを嘲笑(ちょうしょう)するように、海外向けの中央テレビが漁業監視船「漁政311」を南シナ海のパラセル(西沙)諸島に派遣したと報じた。漁政は軍艦を改造した中国最大の監視船だ。

 これまでも中国は、海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて軍を送り込んできた。まず92年の領海法で「中国の海」であるとの意思を示し、第2段階では海洋調査船の派遣を開始する。第3段階で海軍艦艇や航空機を派遣して力で領有権を明示する。その先兵が海上民兵だ。

 太田教授は、すでに第3段階に入っていると『インテリジェンスと国際情勢分析』で述べている。

 今回の米音響測定船に対する中国艦の異常接近事件も、表向きオバマ米政権との米中協調が叫ばれようと、海面下では熾烈(しれつ)な戦いが露骨に進んでいることを物語る。インペッカブルは、海南島に配備された中国原潜の音紋採取や潜水艦を探すための海底地形の調査である。台湾海峡で風雲急を告げたさいに、米空母機動部隊の脅威となる中国潜水艦を警戒するためでもある。

 南シナ海は日本にとってこそ中東原油を輸送する生命線である。ソマリア沖に護衛艦2隻を派遣するだけでも大騒ぎをしているようでは国益の確保はおぼつかない。やがては中国の空母が台頭してくるはずだ。


【野口裕之の安全保障読本】中国の“トロール漁船”警戒を

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