クライメートゲートが今年最も世界のメディアを騒がせたニュースだ。 え、聞いたことない?(日経産業新聞online)
2009-12-21


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「クライメートゲート」が迫る覚悟(産業部編集委員 中山淳史)
更新日:2009-12-21
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 今年最もメディアを騒がせたニュースは何だったか。国内なら間違いなく政権交代後の日米関係やデフレ、あるいは松井秀喜のエンゼルス移籍かもしれない。だが、世界に目を転じれば、「クライメート(気候)ゲート」ではないか。え、聞いたことない?

 「気温の低下を隠すトリック(データ操作)を終えた」。11月中旬、地球の温暖化研究で知られるフィル・ジョーンズという英大学教授が、米研究者にあてたメールがネット上に流出した。同教授が務めるイーストアングリア大学のコンピューターからはそのほか10年分以上ものデータが流出してしまった。一連の「事件」をウォーターゲートならぬクライメートゲートと呼ぶ。

 メールの中身に反応したのは温暖化現象が人為的だという事実そのものに懐疑的な科学者たちだった。以降、欧米では大騒ぎになり、連日、メディアが競って成り行きを取り上げた。

 一方、温暖化人為説の支持者たちは、流出事件が計ったように第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の直前だった点にざわめいた。「ロシア情報機関の仕業じゃないか」「石油が温暖化の元凶のように言われ、劣勢に立たされていた中東某国が関与した」。そんな憶測がまことしやかにネット上などに広がっていった。

 開幕当初はCOP15も揺れた。政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長は初日、同パネルの信頼性が揺らぐことを懸念し、「透明性と客観性は保証されている」と機先を制している。ジョーンズ教授はIPCCに深く関係していたためだった。

 日本ではあまり話題にならなかった。流出したメールの信ぴょう性や背後にある政治的意図が見え隠れしたためかもしれない。あるいは、「温暖化はどんなことがあってもよくないこと」との考えが日本人には強い背景もあるだろう。調査機関によれば、人為的温暖化説を信じる人は米国が6割弱なのに対し、日本は9割にものぼる。

 米欧と日本の温度差が大きければ大きいほど、二酸化炭素(CO2)削減を巡る目標水準の差と重なって見えてくるのは錯覚だろうか。日本の鳩山政権は25%削減を打ち出すことで、国際交渉でイニシアティブをとる考えだった。だが、米国や、中国ほか新興・途上国は高い目標にあくまで消極的なまま。だから日本だけが突出してしまう結果になった。

 ただ、日本では産業界が自国の「突出」に反発していた。恐らくクライメートゲートについても政府に対し各国での報道ぶりを詳しく紹介し、25%への慎重姿勢を促していたに違いない。

 それはともかく、クライメートゲートは米欧の中の利害対立の構図を浮き彫りにしたとも言われる。排出権取引など地球温暖化を巡る金融取引や環境関連企業などへの出資を通じて利益を上げそうな国や人々。そして石油産出国のように時代に逆行しかねない国や人たちの2つである。

 前者には多分、元米副大統領のアル・ゴア氏や著名投資家のウォーレン・バフェット氏、あるいは米欧金融機関が入るのだろう。だとしたら「環境ビジネス」と一口に言っても政治や経済の複雑な人脈、世界とのかかわりを抜きには語れないということだ。100年に一度のエネルギーと製造業革命が起きようとしているだけに、日本企業にもそれなりの情報武装と覚悟が必要になる。
[地球温暖化問題]

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