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このエタノールバブルの影響でトウモロコシの価格が上昇し、食品・飼料価格への跳ね返りも懸念されるようになっている。
今年6月1日出荷分より最大手のキユーピーが17年ぶりにマヨネーズの値上げを実施したが、同社は原料の食用油が急騰したためと説明している。大豆からトウモロコシに転作を図る米国農家が後を絶たない中、食用油の原料となる菜種や大豆の価格高騰が影響したのだ。
また、飼料高騰のあおりを受けてハム・ソーセージ大手の日本ハムも値上げを決めるなど、その波紋は日本の食卓にまで拡がりつつある。
■米エタノール戦略の標的
このコーンラッシュは米国のガソリンスタンドを劇的に変えつつある。全米各地に「E85」の看板を掲げたスタンドが急増しているからだ。
E85とはエタノールが85%混入されているガソリンを意味し、これが給油できるスタンドの数は現在約1200カ所となっており、一年半前の約560カ所からほぼ倍増している。
全米スタンド総数は約176000ヶ所と言われていることから、E85が給油できるのはまだ1%にも満たないが、今後更に拡大していくことは間違いない。
このE85導入推進の旗振り役を担っているのが全米エタノール自動車連合会(NEVC)。そのインターネットサイトではE85取り扱いスタンドを地図付きで紹介している。
このNEVCの理事会はトウモロコシ団体やメタノール企業の代表者によって構成されており、メンバー企業には当然のことながらゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターの名前がある。
実に興味深いのは、同サイトにはE85に対応するフレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)も写真付きで紹介されているのだが、ここにGM、フォード・モーター、ダイムラークライスラーと並んで日産自動車、マツダ、いすゞの名前はあっても、トヨタとホンダの名前はない。両社とも、FFVをまだ米国で販売していないからだ。
FFVの98年から05年までの累積生産台数は約490万台となっており、今年1月現在で約70モデルが販売されている。その内訳を見るとダイムラー・クライスラー(24モデル)、GM(18モデル)、フォード・モーター(14モデル)となっており、米自動車業界のビッグスリーがその8割を占めていることがわかる。
ブッシュ自らが先導する米エタノール戦略はハイブリッド技術で世界市場を席巻するトヨタやホンダを標的にしているのである。
■バイオエタノール音頭の光と陰
今年3月にブッシュはビッグスリー首脳と会談、この時ホワイトハウス南庭に搬送された三社製のFFVを前に、「環境対応策が国家安全保障上の利益にもつながる」としながら、バイオエタノールの普及が「ガソリン消費を減らす技術的突破口だ」とアピールしてみせた。
ビッグスリーの本拠地があるミシガン州デトロイトは民主党の強力な地盤となっており、全米自動車労組(UAW)が支持するのも民主党という中で、これまでブッシュ政権はビッグスリーの窮状に冷淡だったが、中間選挙で民主党が議会の主導権を握ったことで歩み寄る姿勢が目立ってきた。
ブッシュ政権発足以来、京都議定書離脱に見られるように地球温暖化対策に消極的な立場をとってきたが、ブッシュ本人が今年9月に行われる予定の気候変動国連首脳級会合に出席の意向を示すなど、ここにきてようやく変わりつつある。
それにしても、今度はエタノール熱に取り憑かれたブッシュの豹変ぶりは米国の黄昏を象徴しているように見える。
なぜなら、FFV推進とて日本のハイブリッド技術に追いつけないビッグスリーに対する一時的な救済にしか見えず、ビッグスリー首脳はトヨタが夢のハイブリッドFFV車でも開発しているのではないかとビクビクする毎日を過ごしていることだろう。
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