響き合う『森の力』>池上彰:困ったら「神社」を探せ!、スサノオ恐るべし、“神社”にビルトインされた災害対策システム、日本の文化の根幹にはそういった知恵がインストールされている
2013-05-25




<関連記事>

困ったら「神社」を探せ! 合意につながるカギがある
桑子先生に入門!「社会的合意形成」 第4回
2013年5月23日(木)  池上 彰
[URL]

池上:前回は、社会的な合意形成を、具体的にどう計画し、どう実行し、どう合意形成に結びつけていくのか、話を伺ってきました。

ここでおそらく大きなポイントとなるのが、ダム工事や河川改修など事業の主体である国や自治体が、積極的に合意形成をしようという姿勢を持つかどうか、だと思います。従来の自治体の立ち位置だと、あくまで合意形成というのは「建前」だけでやるもの、のような感じを受けましたが。このあたり、自治体の対応もずいぶん変わってきたのですか?

桑子:社会的合意形成の重要性を理解してくれる自治体や官公庁は確実に増えています。ただ、もちろんケースバイケースです。少しだけ私が関わったある事業では、当該自治体は、話し合いは完全にオープンにし、誰でも参加できるようにすべきだという、私のアドバイスを一切聞きませんでしたね。

池上:自治体側が必ずしも協力的じゃない場合、どうすれば合意形成に至るのでしょう。

桑子:いい事例があります。道路にまつわるお話です。

 関東のとある町で、県の都市計画に基づいて大きな道路を通す計画が立ち上がりました。ところが道路予定地には、地元で親しまれている森があったんです。地元のとある家族が代々受け継いできた私有地なのですが、市民に開放されていて、子どもたちの環境学習などにも使われていた。その森をぶち抜いて道路を通す計画だったんですね。

池上:そこで、桑子先生に助けてほしいと連絡が入ったわけですね。

桑子:そうです。このときは、自治体側ではなく、地元の、森を守りたいという立場の方から呼ばれました。

池上:まず、どうしたんですか。



スサノオ、恐るべし

桑子:現地に行って、そこがどういう場所かを調査して認識します。で、実はこうした環境開発にからむとき、私は周囲に神社がないか、注視します。

池上:それはなぜですか。

桑子:もとはといえば、日本の神様の故郷、出雲で長く仕事をしていた影響ですね。現場へ行くと、かならず神社を回るようにしているんです。これは、スサノオに感化されたせいです。

池上:素戔嗚尊ですか。

桑子:ええ、スサノオを祭った神社はすごいんです。

 震災の後、私は、研究室の学生と東北に行き、被災地の神社を巡りました。そして、祭神、祀られている神様によって被災状況はどう違うかを調べ、論文にまとめました。これは仮説として考えていたことですが、実際調べてみるとするとびっくりする事実が判明しました。スサノオを祭った社は、どこも津波の被害を受けてないんですよ。

池上:不思議ですねえ。なぜですか。

桑子:それは、スサノオを祀るというのがどういうことなのかを考えるとわかります。スサノオは、ヤマタノオロチ伝説で有名ですが、わたしは、これを斐伊川の治水の象徴と考えています。

 治水をするということは洪水から人びとをまもることです。洪水になると被災した地域には感染症が発生しますから、洪水の被害だけではないですね。実際、スサノオは治水だけではなく、オロチから救ったクシナダヒメと結婚しますので、国づくりの神様、さらに、災害から発生する感染症をはじめとする病気から人びとを守る神様として信仰されてきました。

 つまり、スサノオは人びとを災害や病気から守る神様、「無病息災」の神様です。たとえば、京都に八坂神社がありますね。そこのお祭り、祇園祭は、無病息災を祈るためのものなんです。

池上:なるほど。


続きを読む

[JAPAN]
[YAOYOROZU]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット