「全量買取42円の亡国祭り」がいよいよ開幕! − 再生エネルギーに異業種参入続々、定款変更も相次ぐ
2012-05-28


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風力・太陽光、全量買い取りで大量導入へ 先行スペインの悩みに学ぶ
2012/5/21 7:00
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 2012年7月に再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(以下、全量買取制度)が日本でも始まる。これにより近い将来、風力や太陽光など発電量が不安定な電力が商用電力の送電系統(以下、系統)に大量に入り込むことになる。

 実はこうした状況を日本よりも先んじて経験している国がある。スペインだ。2012年5月9日、東京都内のホテルでスペイン大使館主催の「再生可能エネルギーフォーラム」が開催され、再生可能エネルギーの導入が進むスペインの状況が明らかにされた(図1)。「スペインは既に電力の約32%を再生可能エネルギーで発電している。その中で最も多いのは風力、続いて水力、最後に太陽エネルギーである」(スペインKPMG社 パートナー Antonio Hernandez氏)。一方、日本の再生可能エネルギー比率は10%程度であり、そのほとんどが水力発電である。水力は比較的安定した電源であるため系統への影響は少ない。

■FIT制度で2兆円の赤字

 「スペインの風力発電システムの設置容量は2010年に20GW(ギガワット)に達した。これは欧州で2番目、世界でも4番目の規模である。2012年末には23GWに増える見通しである。太陽光発電システムの設置容量は2010年末に4GWになり、欧州で2位、世界で3位の規模を誇る。太陽熱発電は2010年に1GWに達して世界トップ」(同氏)。

 このように再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいるスペインだが、これまでの道のりが順風満帆であったわけではない。

 スペインは2007年に長期間にわたる高額な買い取り価格を設定したフィードインタリフ(FIT)制度を太陽光発電で導入した。その結果、2008年の太陽光発電システムの設置量は一気に2700MW(メガワット)に増えた(図2)。当初の目標だった371MWを1200MWに変更したが、結果的には変更後のさらに倍以上が設置されたことになる。

 スペイン政府は、あわてて買い取り価格を下げるなど、投資ブームの沈静化に追われた。この予想を上回る太陽光発電システムの設置によって、電力を高額で買い取らなければならない配電会社は大幅な赤字に陥った。その債務額は206億ユーロ(約2兆1000億円)。スペイン政府が一時的に肩代わりしているが、今でもスペインにとっては大きな痛手だ。

■2008年を境に温暖化ガスの排出量削減

 そもそも再生可能エネルギーの導入には二つの目的があった。一つは、温暖化ガスの排出量の削減である。2005年に1990年比で約1.7倍にまで膨らんだ温暖化ガスの排出量は、再生可能エネルギーの導入が進んだ2008年に減少に転じ、2010年には2000年レベルにまで下がった(図3)。下げ幅の目標には及んでいないものの、当面の目的は達成された。

 もう一つの目的は、エネルギーの国外依存度を下げることである。スペインは石油と天然ガスの99%以上を輸入に頼っており、大きなリスクを抱えている。これを少しでも軽減したいところだが、実際にはエネルギーの国外依存度は1990年の約64%から2005年には80%近くにまで上がってしまっていた(図4)。しかし、再生可能エネルギーの導入が進んだ2008年に減少に転じ、2010年には75%を下回る水準になった。まだ目的達成と言えるレベルではないものの、確実にリスク低減を進めつつある。

■問題は山積みだが…

 紆余(うよ)曲折はあったが、目的達成に向かって再生可能エネルギーの導入を進めるスペイン。しかし再生可能エネルギーの導入が増えたことで、解決しなければならない新たな問題が生じている。系統を安定させることである。


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