東京財団「日本の水源林の危機」シリーズを読む
2010-03-29


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奈良県境に近い三重県大台町では、昨年1月ごろ中国の企業関係者が町を訪問。水源地の宮川ダムを視察した上で、「立木と土地を買いたい」と一帯の私有地約1000ヘクタールの買収を仲介してほしいと町に持ち掛けた。約3年前にも、別の中国人の男性から同じ地域の買収話があったが、いずれも町が断ったという。

 水源地の立木は、原生林を伐採した後に植林した二次林で、木材としては使いにくい。土地も急斜面で木材の運び出しに費用がかかるため、同町産業室の担当者は「木ではなく地下にたまった水が目的ではないか」と分析する。

 また、長野県天龍村には昨年6月、東京の男性が訪れ「知り合いの中国人が緑資源を買いたがっている」と持ちかけてきた。森林組合の担当者によると、男性は「今の市場価格の10倍の金を出す」と話したが、外国資本であるため難色を示すと、話は立ち消えになったという。ほかにも、岡山県真庭市の森林組合に昨年秋、中国から水源林を伐採した製材の買収話が持ちかけられ、その後も交渉が継続している。

 林野庁によると、昨年6月、「中国を中心とした外国資本が森林を買収しているのではないか」との情報が寄せられ始め、実態把握のため全国の都道府県に聞き取り調査を始めた。売買が成立したケースは確認できなかったが、同庁の森林整備部計画課は「現在の法制度では、万一、森林が売買されたとしても所有権の移転をすぐに把握する手段はない。森林の管理についても国が口をはさむことは難しい」としている。

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 ■林業衰退…外国資本の標的

 日本国内の水源地に中国資本が触手を伸ばす背景には、世界各地で繰り広げられる水資源の争奪戦がある。一方で日本国内の水源地は約30年前の価格にまで暴落しており、中国にとっては買い時に映ったとみられる。識者は「水源地を守るためには現在の法制度は未整備」と訴えている。

 東京財団の調査によると、中国では飲用水の需要が急速に伸びており、この10年間で約4倍。工業化が進む北部では工業用の水不足も慢性化しており、内陸部でも、干魃(かんばつ)被害の影響で水不足が深刻化しているという。

 国連の予測では、人口爆発と経済発展により、水不足の深刻な国で暮らす人は現在でも5億人に達し、2025年には約30億人に増加するとしている。一方で「水メジャー」といわれる大企業が、世界で水源地を確保しようとする動きも目立っているという。

 これに対し、日本国内では水源地を守る役割を果たしてきた林業が衰退し、外国資本が入り込むすきを与えているとの指摘がある。日本不動産研究所によると、安価な輸入木材に押されて、地価にあたる林地価格や、立木価格は昭和55年以来、ほぼ一貫して下落。平成20年3月末で、10アール当たりの林地価格は北海道と沖縄を除く全国平均で5万5118円、昭和49年時の6万460円を下回る価格となった。

 森林が国土の約7割を占めるにもかかわらず、法制度の不備もある。国土交通省水資源政策課によると、現在の地下水の規制は都市部で地盤沈下を防ぐことが目的で、山間部については、地下水をくみ上げる量に制限がないという。

 さらに、森林法では民有林の売買に関する規制はなく、所有者は山林を自由に売買することが可能。国土利用計画法でも、1ヘクタール未満の土地の場合は届け出義務がなく、外国資本による水源地買収を把握する制度すらないという。


外国資本、森林買収に触手―林野庁調査昨夏まで交渉あり
2009/05/15日刊木材新聞

 13日、一般紙に「中国が森林買収に触手」「日本の水源地を物色」「林業衰退、外国資本の標的に」という記事が掲載された。同社系の、朝のテレビ番組でこの記事が取り上げられたこともあって、同日、林野庁に問い合わせが殺到した。


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