FITのうまみで膨らむ「太陽光利権」、始まった経済産業省「自業自得」のバブル退治
2013-12-25


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しかも、その高い買い取り額が20年間にわたって続く。大手電力が最終的に買い取り代金を電気料金に上乗せして回収するため、家庭や企業にとっては、新たな負担だ。経産省の試算によると、2020年に家庭の負担は現在の2.5倍の月276円に膨らむ。買い取り制度のモデルにしたドイツは負担が月2400円まで増え、制度の是非を巡る論争が起きている。

 裏を返せば、発電事業者に大きなうまみがある制度だ。太陽光発電設備を売り込む家電量販大手の広告を見れば、一目瞭然だ。

 「土地の有効活用を支援します!」――。宣伝文句とともに並ぶのは、魅力的な数字だ。北関東の地方都市で発電能力が54キロワットの太陽光発電設備をつくった場合、初期投資に約1500万円かかるが、1年間で200万円以上(売電価格は今年度の1キロワット時あたり36円で算出)の収入が得られるという。

 単純に計算すれば、買い取り期間の20年間で4000万円の収入が懐に入る。初期投資の費用を差し引いた2000万円を超える額が手元に残る。そのほかの費用が加わったとしても、おいしいビジネスだ。だからこそ、発電プラントを扱うことに慣れたエネルギー大手や大手製造業に加え、経験のない中小企業まで、買い取り制度のアメに吸い寄せられた。

■「取り消し処分」という伝家の宝刀

 これまで経産省が買い取りを認定した太陽光発電所の計画を足し合わせると、出力にして2000万キロワットを超える。実現すれば、国内電力4位の九州電力とほぼ同じ発電能力が生まれるはずだった。ところが、現実は違う方向に向かっている。

 「今のような事態は、想定外だ」

 経産省で買い取り制度を管轄する資源エネルギー庁の幹部は唇をかみしめる。多くの計画に「買い取り認定」を与えたのに、認定した案件のうち、今夏までに稼働したのは1割強ほどにとどまっているからだ。自ら発電設備を設置する気がなく、認定枠の転売を狙ったブローカーやパネルの値下がりを待っている業者が多く、認定枠が単に利権化している実態がうかがえる。

 一因は、買い取り認定の条件が当初は緩かったことにある。買い取り対象に認定するか審査する際、土地の権利を確認する書類の提出すら昨年12月まで義務づけていなかった。ある経産省幹部は「参入者を増やし、太陽光など再エネの普及スピードを上げたかった」と説明するが、放置していては制度の信用すら揺らぎかねない事態に陥っている。

 今までも、経産省は認定を得るために必要な書類を増やしたり、買い取り価格を引き下げたりして巡航速度に落ち着かせようとしてきた。しかし、それでもバブルはコントロールできない。省内では、こんな議論まで出てきている。

 「年明けにも取り消し処分を出すことになるかもしれない」

 いったん買い取り対象と認定した計画も、場合によっては、認定を取り上げる――。許認可権を握る官庁として、伝家の宝刀を抜くというのだ。事実、経産省は周到に準備を進めてきた。

 「太陽電池モジュールのメーカー等と売買契約が締結されているか」

 「(発電事業を行う)土地や建物の権利を取得した日はいつなのか」

 こんな質問が並んだ調査票が、太陽光発電の買い取り認定を受けた事業者に送られてきたのは今秋。A4判で7ページあり、計画の実現性を尋ねる質問が並んでいた。差出人は経産省だった。

■バブル退治の前に売り抜けも

 あるエネ庁の幹部は、この調査票について「調査票の送付先は、出力400キロワット以上の買い取り認定を受けながら、未着工の案件を抱えている事業者。その数は数千になる」と説明する。回答しなかったり、虚偽の記載をしたりした場合は罰則を科すこともあるという。買い取り認定を得ながら着工しない事業者に対し、経産省の目は一気に厳しくなりつつある。

 実際に稼働している発電所が少ないという理由だけではない。発電所の土地取引を巡って異常な事態を太陽光バブルが引き起こしつつあるからだ。


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